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世界から注目を集める上野のスニーカーショップ:mitasneakers 国井栄之 氏 ロングインタビュー

mita sneakers 国井栄之 氏 ロングインタビュー

スニーカーブームがカルチャーとして昇華されていく中、精力的に様々なブランド・メーカーとコラボレーションを手がけるミタスニーカーズのクリエイティブディレクターであり、世界中のスニーカーフリークから注目を集める国井氏。一体なぜここまでミタスニーカーズは魅力的なのか、国井氏に聞いてみた。

ー ミタスニーカーズは現在、日本だけでなく世界中のスニーカーフリークが名前を知っているショップとなっていますが、ミタスニーカーズのスタートというものは、どういった形だったのでしょうか。

ミタスニーカーズ 国井氏(以下、国井): ミタスニーカーズは三田商店という下駄や草履の製造販売業が起源になっていて、その後、僕が入る前の80年代からスニーカーの小売にシフトしていったんです。そして1996年にアルバイトとして僕も入社したのですが、その頃はスニーカー自体を特別に好きな人間ではなかったと思っています。

ー ある程度古くからミタスニーカーズを知っているスニーカー好きは、時代に先駆けて別注、そしてコラボモデルを始めたのもミタスニーカーズと認識している方も多いと思います。これはやはり国井さんが仕掛けていったことなのですか?

国井: 元々カーレーサーを志していて、車とスニーカーの構造が似ているなと言う勝手な解釈もあり、カーレーサーを諦めた時点で、形になって残るものを作ってみたいと言う思いが強くありました。90年代当時は海外流通限定ものなどが出始めていたころで、コラボレーションと言うものが日本には無かった時代なんですが、ミタスニーカーズに入って2年後くらい、アルバイトで名刺も持たされて無かった状態の時に自分で名刺を作り、近隣のスニーカーショップで働く同世代の友人と共にナイキに直談判に行ったのが元々のコラボレーションの始まりです。

ー 別注やコラボと言うと今でこそたくさんありますが、当初は様々な障壁があったのではないでしょうか?

国井: いや、そんな風には思っていなくて、その当時のNIKEのプロダクツ担当者が凄く柔軟な考えの方で、前例のない事に挑戦してみたいという考えがあり、僕としても同じ想いがあったので、お互いそこが合致して始めたのが最初です。ミタスニーカーズのSMU(SPECIAL MAKE UP・コラボレーション)としてではなく、上野シティアタックとしてAIR FOOTSCAPE※1を出したのが最初です。

ー 当時のミタスニーカーズの別注ものと言うとカラフルなものが多かったイメージがありますが、そこにはどんな考えがあったんでしょうか。

国井: スニーカー=運動靴と言うイメージが強かったんですが当時、夜遊び後の朝帰り時に東京の路上に並べられたポリバケツの鮮やかなブルーとアスファルトのコントラストが印象的で、そこから着想を得て出来たのがNEO ESCAPE※2で、そのあと温故知新※3を作ったときも、当時はあそこまでのマテリアルをMIXして作るってことが有り得なかったので、逆に有り得ないことを実現する為に作ったモデルです。過去があるから今や未来があるという意味で、3分割して過去・現在・未来のイメージで素材を配し、具現化しました。

ー 上野と言うある意味で地域密着な場所にお店を構えているわけですが、ここ上野を離れると言うことや店舗を増やそうという考えはこれまではなかったのですか?世界に通じるミタスニーカーズであれば出店の誘いは山ほど来そうですが…

国井: オファーは数え切れない程ありました。当時も国内外始め、色々とありましたが、その都度『出店の必要が無い』となることが多かったです。一番最初は上野の桜フォース※4を出した時に上野という地名をスニーカーに入れているのに他の街にショップがあったらブレるなと考えてやめることしました。

その後また考える機会があった時には、インターネットを介して通信販売すると言うビジネスが軌道に乗ってきたのに加えて、様々なブランドとコラボレートすることで地域的なバッティングが出てきたこともあって、それならばオンラインで全国のお客様に商品を届ける事も以前よりはポピュラーになったし、違う街を拠点としてアパレルブランドやショップを運営いる方々とクロスオーバーすることを考えると、他の街に出店することがベストな選択だとは思わなかったんです。出そうと思ったタイミングで必要が無いという結果が続き、現在に至っています。

ー 今後も出店する予定はないと言うことですか

国井: 逆にもうないですかね。もしかしたらと言うのはあるかもしれませんが、あるとしたら期間限定でポップアップとかかもしれません。でもやるとしたら、そこの地場のスニーカーショップと協力して一緒にやるのがアリかなと。

ー 話はそれますが、アディダスのスーパースター スリッポンをLEADDYで紹介したことがあるんですが、単刀直入にどう思いますか

国井: ウチでは取り扱っていません。もちろん人気があることも知っていますし、売れるだろうなとも思いました。ですが、ミタスニーカーズが取り扱う必要は無いと思いました。スタンスミスとかも凄い売れてるじゃないですか。ウチでも一応販売はしているんですが、現在の様な状況になる前と全く変わらない数量をオーダーさせていただいています。

ー そこにはどんな考えがあるんでしょう

国井: 欲しいものを店頭に揃えるのもショップの義務だとは思うんですが、スタッフにもこれは常日頃から伝えていて、結局良くも悪くも『自動販売機』になってはいけないと考えています。売れ筋のスニーカーを買いに来たけど置いていない。でもそこでミタスニーカーズでセレクトした目的買いとは別のスニーカーを選んで貰い、お客様が地元に帰ってから「そのスニーカー、イケてるね。」とか仲間に言われたり、履き続けた後に本当に愛着の湧く逸足になったり、半信半疑が確信に変わる時こそが、スニーカーショップ冥利に尽きると思いますし、お客様とショップの信頼関係が築かれる瞬間だとも思っています。

また、金網で囲まれたお店があるんですけど、スニーカーを買うための流れを表現してるんです。お店に来て、商品を手にとって、手に取ったときに初めて値札が出て、そこで手に取ったものとその価格が自身が思う価値に見合うかを判断すると言う流れを作っています。そこでフィッティングして納得していただければ購入していただくと言う流れです。

そして、フィッティング用の鏡はわざと割っていて、足元しか映らないようになっています。全体のコーディネートも勿論大切ですが、ミタスニーカーズは靴屋なので、足に合っているかとか感覚として違う部分を見てほしいという思いがあります。店内が少し暗いのも、都市生活者って夜にスニーカーを履くことが多いと思うんです。ナイトランや夜遊びしたりとか。薄暗いところでスニーカーがどういう風に見えるのか自身の感性で理解できるようなショップにしたかったんです。

金網も夜の公園をイメージしています。それと360度スニーカーに囲まれるってスニーカー好きの人からするとこれ以上なく居心地のいい空間に感じていただけるだろうという思いから、あの空間にしています。ブランドで区切ったりさほどしていないのは、カテゴリーやブランドを超越したスニーカー選びを体感して欲しくて、トレジャーハンティング的なことができるようにボーダーレスでフラットに考えられる空間にしたかったんです。

僕はコラボレーションやリミテッドだから良いとか全く思っていなくて、むしろインラインの方が好きだったりします。

ー 2017年も始まったばかりですが、近日発売するモデルや国井さんが注目しているスニーカーを紹介していただきたいです。

国井: ファッション的に言うとラグジュアリーとスポーツって両極の存在だったり、ライフスタイルスニーカーとスポーティンググッズって遠い存在だったと思うんですけど、今は様々なモノやコトやヒトがどんどんボーダーレスになっていると思うんです。今ちょうど、ニューバランスが新しく提案しているMRL247※5というモデルがあるんですが、そのコラボレートの一発目がミタスニーカーズのコラボレートアイテム※6として発売されます。それ以外にも各社色々とリリースしていく予定ですが、『ミタスニーカーズ』というフィルターを通して、インラインモデルと共に紹介させていただければと思っています。

ー ミタスニーカーズは人気商品を販売する時にドレスコードありの並び(並び抽選含む)と言う形をとることが多いですが

国井: 本来ドレスコードなどは設けたくなかったのですが、現在の異常な状況を考えると事前の精査も必要不可欠な要素になってしまいました。少しでもスニーカー好きな方に購入してほしいと考えていて、運任せもアリだと僕は思っているんですが、完全に運任せの販売方法が多い中、1店舗ぐらいある程度努力で手に入れられるお店があっても良いのではという想いもあります。

第1優先として、スニーカー好きな方の手に渡ってほしいですし、ガッカリしてスニーカーを嫌いになってほしくないのが正直な本音です。

ー長時間お時間いただきありがとうございました。また店頭に遊びに来ます!

※1 東京上野のミタスニーカーズ含めた3店舗のみで販売された名スニーカー。NIKE AIR FOOTSCAPE “UENO / CITY ATTACK”

※2 NIKE AIR MAX 95 NEO ESCAPE “mita sneakers” その後AIR MAX 95+ BB NEO ESCAPE 2.0 “mita sneakers”も発売

※3 NIKE AIR FORCE I “温故知新” “mita sneakers” 異素材を豪華に切り替えたデザインが特徴

※4 NIKE AIR FORCE I SAKURA “上野 / CITY ATTACK”上野の桜からインスパイアされたエアフォースワンで、レーザー加工で桜模様が描かれ細かいディテールにもUENOの文字が入るフリーク憧れの一足

※5 new△balance MRL247 ニューバランスが2017年に送り出した全く新しい24時間7日間のシームレスなライフスタイルを送る人へ向けたコンセプトモデル

※6 new balance MRL247 “TOKYO RAT” “mita sneakers” “Insole Graphic by Keita Suzuki” 最新のイノベーションを融合させたMRL247とmita sneakersの最新コラボモデルで1月28日発売予定。東京の地下道から屋根裏まで、昼夜問わず四六時中活動する”鼠(ネズミ)”をデザインソースに具現化したモデル

略歴

国井栄之 / ミタスニーカーズ クリエイティブディレクター
1996年から東京・上野のスニーカーショップであるミタスニーカーズに入社後、現在クリエイティブディレクターとして活躍。世界中のメーカーやブランドとのコラボレーション・別注を数多く手掛ける、世界中のスニーカーフリークから注目を集めている。

www.mita-sneakers.co.jp/
www.instagram.com/mitasneakers/
www.instagram.com/shigeyuki_kunii/

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